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一九九七年に採択された京都議定書の取り決めにより、日本は気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出を削減する義務を負う。
今回は、京都議定書の内容を検証すること、義務により生じた日本社会の変化を紹介すること、その義務に日本がどのように対応するべきかを探ること、以上の三点を目的としている。
「京都議定書」という言葉に、どのようなイメージがあるだろうか。
「温暖化を止め、地球を守る国際的な約束」などの、よい印象を多くの人は持っているだろう。
京都議定書とは「一九九四年三月に発効した気候変動枠組み条約の締結国が、九七年の第三回会議(通称京都会議、COP3)で決めた国際協定」である。
そして、「先進国は地球温暖化を防ぐために温室効果ガスを基準年(主として九○年)比で二○○八,一二年の間に削減する。
その量は各国ごとに数値目標を定める」との内容を決めた。
日本は基準年比六%削減の義務を負う。
そして、議定書を二○○二年六月に批准したため、その義務を「誠実に遵守」(憲法第九八条二項)することになった。
京都議定書は六種類の温室効果ガスの削減を決めた。
このガスの大半を占め、日常生活と経済活動に密接に結びつくのは二酸化炭素(CO2)だ。
CO2は石油や天然ガスという化石燃料を燃やすことで生じる。
京都議定書は化石燃料によって作り出されたエネルギーの放逸な使用に歯止めをかけ、現代社会の姿に転換を迫るものだ。
人類の歴史上初めて、経済・環境政策、市民生活の各場面で何かを選択する場合に、「CO2をどう扱うのか」と考える時代が始まった。
しかし、その意義は同時に問題点にもなる。
CO2を減らすには、エネルギーの消費を抑制する必要があり、それに伴う「痛み」が必要だ。
しかし、日本ではこれまでその痛みを正面から議論し、京都議定書のもたらす負担を分析してこなかった。
日本は京都議定書によって自国単独では事実上達成が不可能な温室効果ガスの削減義務を負った。
もし、国内措置だけでこの義務を達成するならば、数兆円規模の負担が必要との試算もある。
制度作りを間違えれば、日本が国際義務の不履行に追い込まれる。
また、排出するCO2に課税する炭素税の導入を環境省が検討している。
これらの負担の実情を国民の大半は正確に知っていない。
「地球を守れ」という視点のみから温暖化問題を語るつもりはない。
「負担と効果を冷静に分析した上で、この問題を考えるべき」と強調し、京都議定書と温暖化をめぐる正確な事実を伝えたいと思う。
現代社会は、地球が数億年の歳月をかけて生み出した化石燃料を、一瞬の暮らしの快適さを追求するために大量に消費する。
その結果として、地球温暖化が進行している。
二○○三年の夏は欧州での高温、中国や台湾での高温少雨、日本での冷夏と多雨など、世界中で異常気象が頻発した。
これらの現象とCO2の関連性は証明されていないが、地球の気候システムが狂い始めている可能性は高い。
こうした現状を誰もが心配するはずだ。
その流れを止めようとする京都議定書の目的を否定する人はいないだろう。
ただ、エネルギーの使用を制約することは、一人ひとりが何らかの負担を背負わねばならないということだ。
京都議定書の義務が加わる二○○八年が近づく。
今から「CO2規制社会」の姿を議論しなければ、多数の人が合意できる社会制度を作り出すことはできない。
新たな制度の方向はどうあるべきか。
私は、京都議定書の見直しと、エネルギー・環境政策を民主的な姿へ転換することが必要だと主張したい。
京都議定書には米国や発展途上国が参加しない。
そのため、議定書が温暖化を防止する効果は限られたものだ。
また、削減の数値目標を各国に加える形の協定だが、日本の目標は他国に比べ不利となっている。
議定書を見直した上で、日本が自らの持つ技術力を使って、世界に貢献する道を探るべきだ。
また、「霞ヶ関」製の決まりを全国一律で行うこれまでの国内の温暖化対策には効果があまりない。
地域の市民が、CO2削減の自主的な合意を集積し、それを自らの意思で実行する形に変えるべきと考える。
地球温暖化を止めることは難しい試みだ。
ここでは、CO2を即座に減らせない現実が示される。
私たちの世代はこの問題を解決できないかもしれない。
ただ、「何もできなどと皮肉な構えのまま状況をあきらめては、次の世代への責任を果たせない。
作家の開高健氏は「あす世界が滅びるとも、きょうあなたは林檎の木を植える」という言葉を生前よく引用した。
宗教改革者、マルチン・ルターの言葉だ。
「林檎の木を植える」という言葉に象徴されるような、未来につながる小さな営みを行うこと、そしてそこから生まれるささやかな希望を、簡単に捨てるべきではない。
一人ひとりが地球温暖化と京都議定書をめぐる事実を知り、考え、行動を始めることで、状況が変わることを信じたい。
97年の京都会議で議定書を採択し、閉会のあいさつをする大木浩議長。
(時事) 第「日本が二酸化炭素(CO2)を削減する強い意思を世界に示さなければならない」。
京都会議直前の一九九七年九月二四日の深夜、東京・赤坂の全日空ホテルの一室で官邸からの高官が語った。
外務省、環境庁側の出席者も同調する。
通商産業省(以下、通産省)側の出席者たちは言葉を返し、強硬な反対を続けた。
「経済にどのような打撃があるか……」、「削減ゼロがやっとです」。
だが、議論が出尽くしたところで通産省側は国内での削減を認めた。
「どんなに悪い事柄とされていても、それが始められたそもそもの動機は善意によったものであった」ユリウス・カエサルこの深夜の会合の結果、京都会議で議長国日本が「先進諸国が基準として温室効果ガスを二○一○年までに九○年比五%減らす」と提案することが了承された。
同時に、日本はガスの削減が難しいことを各国に訴え、同二・五%減ですむように主張することも決まった。
その内訳は、エネルギー起源のCO2排出量(産業・民間・運輸部門での化石燃料の使用による排出)は九○年比で同程度、非エネルギー起源のCO2排出、メタン、一酸化二窒素などの他の温室効果ガス分は同○・五%の削減。
また革新的技術開発や国民各層の努力による活動の推進によって二%減程度を見込むものだ。
そこに立ち会ったのは総理府、通産省、環境庁、外務省の幹部らだけだった。
参加者の一人は「この会合は京都会議に向けた日本の腹案作り。
少人数の会議は仕方のない面があった」と語る。
ここで決まった原案は、当時「官邸会議」と呼ばれた産業構造審議会(通産大臣の諮問機関、民間有識者で構成)と中央環境審議会(環境庁長官〈現環境大臣〉の諮問機関)の合同会議によって承認され、民主的な決定手続きを踏んだ上で国の政策となった。
しかし、温室効果ガスを削減するという国の方向は、わずか一○人程度の高級官僚らの会合から始まった。
この寂しい出発の姿を、負担を引き受ける立場にある私たち国民は心に留めるべきではないだろうか。
経済産業省(旧通産省以下、経産省)、環境省(旧環境庁)に対して情報公開法に基づいて行政文書の開示請求を行ったが、会合の記録はないという。
通産省と環境庁の対立この前後の事情を再現してみたい。
始まりの検証は、未来の理解につながる。
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